下肢静脈瘤とは
足の静脈がこぶのように膨らんだ状態をいいます。下肢の血液は、足の運動によって心臓に戻っていきます。また静脈には、血液の逆流を防ぐための弁がついていて、血液が重力に負けて下へ引かれ逆流しないようにくい止めています。
この逆流防止弁は、足の付け根や膝の裏など、太い静脈血管の合流部で壊れやすく、これが原因で血液は逆流し、足の下の方に血液が溜まり、静脈がこぶのように膨らむのです。
おもにその太さにより、次の4種類に分類します。すなわち、伏在型(図1,2)、分枝型(図3,4,)、網目状およびクモの巣状(図5,6)です。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
下肢静脈瘤の症状は、平井らによれば(静脈学 2000;11:247)、足のだるさや重さ、痛みが56%にみられ、むくみ(9%)、かゆみ(6%)、こむら返り(5%)血栓性静脈炎(4%)などです。放置しておくと色素沈着と皮膚硬化症を来します(図7,8)
図7
図8
当院での下肢静脈瘤の治療方針
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クモの巣状および網目状静脈瘤の場合
軽微なもので症状がないものは充分説明の上で、放置するか弾力ストッキングの着用を指導します。
足がだるい、重い、こむら返りが起こるなどの症状がある場合は、他の疾患を除外したうえで硬化療法(フォーム)を行います。
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側枝型の場合
静脈瘤が比較的細い場合には、硬化療法のみで治療することが可能です。
静脈瘤が比較的太い場合には、下肢静脈エコーを行い、交通枝からの逆流が確認されれば、交通枝の結紮と硬化療法を行います。
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伏在型の場合
全例に下肢静脈エコーを施行し、逆流のある交通枝を結紮したあと、後日残存静脈瘤に対する硬化療法を行います。
硬化療法とは
硬化剤を拡張した静脈瘤の中に注入し、静脈の内側の壁と壁をくっつけたり、血栓で血管を詰めてしまう方法です。
硬化療法だけで、すべての下肢静脈瘤が治療できればよいのですが、伏在静脈瘤のように太い静脈瘤では再発しやすいので、先に交通枝を結紮してから硬化療法を行うなどの工夫が必要になります。
硬化剤はポリドカスクレロール(0.5,1,3%)(図9)を使います。
図9
図10
図11
最近は効果や効率がいいという理由で、硬化剤を泡立てて使用するフォーム硬化療法が主流になっています。
硬化療法を行ってはならない症例は、①寝たきりの人、②強度の下肢虚脱、③硬化剤アレルギーが絶対禁忌になっています。
硬化療法の合併症は、瘤内血栓形成(37%)、色素沈着(7.5%)(図12)で比較的安全に行えます。
図12
症例呈示①.
①硬化療法のみで治療
症例1:54歳男性
初診時
1週間後
18日後
54日後
症例2:61歳女性
初診時
1ヶ月後
症例3:58歳男性
初診時
1ヶ月後
②高位結紮+硬化療法
初診時
SPJで結紮
2週間後硬化療法施行
硬化療法後 3日目
③交通枝結紮+硬化療法
初診時
エコーにて交通枝確認
治療後